宇宙混沌
Eyecatch

第6章:勘が鋭いジータちゃん [2/4]

「何の手がかりも無い!」
 僕が嘆いても、カシウスは顔色一つ変えずに「そうだな」と返しただけだった。
「警察も知らないって言うし! あーほんと何処に行ったんだ?」
「一つ訊きたい」
 頭を掻いていた指の隙間から、カシウスを横目で見る。何か思い浮かんだのか?
「お前はグウィンを里親に預けている間、帰宅時間を確認していたのか?」
「え? いや、してないけど……」
 教育方針は友人達に一任していた。僕は教育のプロでもなければ、当然育児経験も無い。それは当時の彼等も同じだったが、頼んで預ける側が細かく指示を出すのも変な話だろう。
「じゃあまだ門限じゃないのかもしれない」
「は?」
「グウィンがいつも何時に家に帰るのか、アイザックは知らない。いつもじゃなくてたまにでも良い。遅い帰宅をグウィンの両親が咎めたのか、そもそもそんな事があったのかさえ、アイザックは検知していない」
「……何が言いたいんだい?」
「グウィンの基準とアイザックの基準がズレている可能性。監視体制の一貫性の無さ。あとは環境の違い。この町はグウィンの家がある町よりも治安が悪いのか?」
「…………」
「すまない、からかった」
「……人が本気で心配している時にそういうのやめてくれるかい?」
 声色に苛立ちが交じる。落ち着け、落ち着け。
「そうだ、肩の力を抜け。思考の力を使え。お前はエンジニアだろ」
「わかってるよ」
 一度カッカしたおかげで、逆に冷静になることができた。確かに、がむしゃらに歩き回っても見付けられる確率は低い。考えろ。グウィンなら、ジータなら。トラブルがあった時にどんな行動を取る?
「っ、あ〜。考えうるパターンが多すぎて絞り込めないよ」
「お困りのようだね」
 その時、背後から声がかかった。振り返ると、青い髪のエルーンと赤い髪のドラフのコンビが立っている。空域でも指折りの傭兵、ってイルザさんが言ってたっけ。
「そちらさんもまだ見付けていないようだけど」
「まあね。でも、多分手助けが出来ると思って」
 言うとドランクは一冊の本を取り出す。街灯の下に立ってページを繰り始めた。
「難しい魔法なのか?」
 スツルムがドランクに問う。
「いや、今日この本を買って、初めて使ったやつだからまだ覚えてなくて。でも、さっきもこれで上手くいったんだ」
 言いながらドランクが手を地面に翳し、何かを唱える。間もなく、地面の上に無数の光る影が浮かび上がった。カシウスが感嘆する。
「面白い。足跡だ」
「うん。……良かった、まだ残ってる」
 ドランク指差した先に、成人男性と思われるサイズの足跡と、女子供と思われる足跡の軌跡が合わせて三本続いていた。
「これが僕の靴跡だ」
 光の隣にドランクが並ぶと、ぴったりと大きさが合う。それは暫く小さな二つの足取りと一緒に進んで、途中で引き返していた。
「じゃあ……」
「これを追って行けば良いって事」
「こんなのあるならもっと早く言ってよ!!」
 僕が怒鳴ると、ドランクは苦笑した。笑ってる場合か。
「出来たら使いたくなかったんだよ。自分が何処に行ったかなんて、知り合って間もない人間に知られたくない事もあるんじゃないかと思って」
 その言葉に、他にも出かかっていた文句が腹の奥まで下がった。
 他人のプライベートに立ち入らない、か。とは言っても、今は事態が事態だ。いやでも、確かに言いたい事は解る……。
 グウィンのことを一番心配しているのは僕だと思っていた。実際それは間違っていないだろう。でも、大事にしていたのは、彼も違ってはいなかったんだ。
「その……助かるよ」
「お礼は、彼女達が無事に見つかってからで。目を離したのは僕の責任だし」
 ドランクは足跡の軌跡を追う。徐々に薄くなっていく光が途切れた場所で、再度魔法をかける。
「行こう」
 カシウスの呼びかけに、僕達もそれに続いた。

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