宇宙混沌
Eyecatch

二人の関係 [6/6]

「いらっしゃい、二人共」
「こんにちは~オルキス様~」
「久し振りだな。黒騎士は?」
「此処に居る」
 王都メフォラシュ。騒がしさに王宮の玄関へ赴けば、二人の客人は土産を手に微笑んでいる。
「はいこれ皆に」
「うわぁ、なあに?」
「迷ったんだけど、無難にお菓子です」
「ありがとう! アダム、これもテーブルに並べて」
「承知致しました」
 アダムとオルキスは茶会の準備をしに行く。私は二人を振り返った。
「今日はどうした?」
「別に。近くで仕事があったから寄ろうと思っただけ」
「今も傭兵業を?」
「まあね」
「まだ引退する様な歳じゃないだろ」
「そう? 僕は田舎に家を買って、自給自足生活も良いなーなんて思ってるけど」
「お前に畑仕事ができるとは思えないな」
「自分で言ってみて気付いたけどそうだね……」
 相変わらず仲が良さそうで何よりだ。とにかく上がってもらう。
「黒騎士様は、オイゲンさんと仲直りした?」
「さあな」
 絶縁状態ではない。時折グランサイファーがメフォラシュに立ち寄る際に、他の皆と共に顔を合わせる。それだけだ。
「お前達も相変わらずか」
「まあね~」
「別に困ってないからな」
 今のままでも、とスツルムは付け加える。このまま、ずっと。変わらない事が、二人にとって一番価値があること。
 だったら、私の両親も、本当は。
「お待たせ!」
 オルキスが直々に茶を淹れてくれる。この地方の特産品の茶葉は、小さい頃母もよく淹れてくれた。
『アルテミシアの淹れる茶を、空に持ってければ良いんだがなあ』
 ふと、オイゲンが珍しく家に居た日の言葉を思い出す。
『アポロも良い子にしてろよぉ。また他所の島の本、買ってきてやるからな』
 ただすれ違って、意固地になっているだけだとはとうに気付いている。オイゲンは確かに家にはほとんど居なかったが、妻子を飢えさせたり他の女に乗り換えたりするような奴ではなかった。
 母も変わらない関係を愛していたのだ。空を飛び回るオイゲンの帰りを待つ日々をも。
「どうしたのアポロ。ぼんやりしてるけど」
「え? ああ、すまない」
 礼を言って出された茶を啜る。温かい。
「美味しい」
「ありがとう」
 オルキスの笑顔は眩しい。私も、やっと手に入れた安寧の日々を、大切にしていこうと思う。

闇背負ってるイケメンに目が無い。