宇宙混沌
Eyecatch

二人の子供 [6/6]

「んで、その後どうなったんだ?」
「止めましたよ、必死で。スツルムさんは物凄い形相で応戦してくるし、こっちの命がありませんよ」
「案の定、スツルム一人で俺達三人と互角という所だったな。最終的に俺がベンジャミンを抱えて逃げた」
「あんなに必死で頭下げたの、人生で最初で最後です……」
「まあそうなるよなあ……」
 ビィが深く納得した声を出した。耳を塞いでいるのにちゃんと聴こえるこの聴力が疎ましい。
「ていうか! なんで団長さん達に僕達の黒歴史を暴露してる訳!? ジャスティン君どこまで知ってるの!?」
「ベンジャミンは機嫌が良いと昔の四方山話を武勇伝の様に語るんですよ」
「ベンジャミン~~~~」
 ドランクの矛先が俺に向く。俺は手を耳から外し、代わりに髪をぐちゃっと掴んだ。
「もう全部時効じゃないか! 十五年近く前の話だぞ!」
「ま、まあ、ドランクさんが人を殺してまで宝珠を盗んだっていうのはアオイドスの推測でしょう? アオイドスが沢山人を殺してきたのはもうなんか今更って感じだし……」
「団長さんは優しいなあ~」
「あ、でも十代前半のアオイドスで美人局もどきをやったのは本当に良くないと思います……」
 早口に言ってグランはドランクから距離を置く。そうだ、それが正しい。
「それも良くないが、『メイドに手を出した挙句、父親を殴って家出してきた』?」
 低い声を出したのはスツルムだ。
「あたしには『好きでもない許婚と結婚するのがどうしても嫌で逃げてきた』って言ってたよな?」
「それも嘘じゃないよ!?」
「都合の悪い部分だけを隠すのを嘘と言う」
「あっ、やめて、スツルム殿! 騎空艇の中じゃ逃げる場所が……って痛、痛い!」
 ドランクが甲高い悲鳴を上げる。やはり良い音だなとは思いつつ、俺はそっとその場から逃走した。あの時の仕返しだ。
 それにしても、と俺はまだ悲鳴が漏れ聞こえる扉を見遣る。あいつは寝ていたり深手を負っていたりしても俺の剣を避けていたんだぞ。いくらスツルムの剣と言えど、ああも刺される事は無いんじゃないか?
 間もなく俺は理由を探るのを止めた。それは俺には理解出来ない感情だ。
 生まれ持って欠けていたものを得る旅は苦しい。でも、もしかしたらこの声の様に……なんて期待も、母の腹の中に置いて来てしまったのだった。

闇背負ってるイケメンに目が無い。