宇宙混沌
Eyecatch

不器用な二人


「スツルム殿スツルム殿スツルム殿~」
「しつこい」
 そいつはまた今日も声をかけてきた。フン、先手必勝、今日は先に釘を刺しておいてやろう。
「あたしは今日は夜まで仕事だ。日を改めろ」
「僕まだ何も言ってないのに」
 それでも、後をつけて来ていた足音が止まる。
「明日からは僕が仕事で居ないから、三日後にまた来るよ」
 来ないで良い。そう言おうとしたが、先程「日を改めろ」とつい言ってしまっていた事に気付く。
 舌打ちをして、仕事に向かう。なんだってそんな事を言ったんだ、この口は。
 ……三日後、か……。

「……言えたな……」
 三日後にまた来る。そう言って足を止められた。仕事が絡むと理性がちゃんと働くらしい。
 三日後、三日後だ。今度こそ必要な事だけを伝えなければ。変にお茶や仕事に誘ったりしないで。

「スツルム! 良い所に来た」
 あれから四日後、あたしはいつもの様に傭兵ギルドへ赴いた。ドナの言葉に、いつもこの時間に来ているだろう、と怪訝に思ったが、口には出さないでおく。
「メンバーからの救援要請があってね。まあ、うちのギルドのメンバーだけでやってた仕事じゃないみたいだけど、成功時の報酬も悪くないから手伝いに行ってくれない? 他の皆も後で送るから」
「わかった」
 仕事の内容を聞くと、あたしは剣を確認してから出発しようとした。
「……もしかして具合悪い?」
「は?」
 扉に手をかけた所でそう言われ、意味不明で聞き返してしまう。体調が悪い時に仕事をしようとするほど、あたしは金の亡者ではない。
「気の所為か。心なしか元気無さそうに見えたからさ」
「……気の所為」
 そう言うと、今度こそ出発する。
 体調は悪くない。それは本当だ。
 けど、集中出来ていないのは、否定しない。
『三日後にまた来るよ』
 ……うそつき。きっと、あたしよりも可愛い女の所でお楽しみだったんだろう。

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