親愛なるフェリお姉ちゃんへ
たった今、病院でお手紙を受け取りました。
一往復にこんなに日数がかかってしまうんですね。
お医者様の話によると、私の状態はとても悪いそうで、今は――の隣の島の病院に入院しています。
せっかくこちらの使用人さん達とも仲良くなった所だったのに、寂しいです。
そちらの人達は、どうしていますか? お姉ちゃんにも会いたいし、友達にも会いたい。
ごめんなさい。お薬の副作用で、心細くなる日が多くて。
またお手紙書きます。
フィラ
追伸:押し花ありがとう
フィラ
具合が悪い時に無理して返事を書かなくても大丈夫だ。
でも、お前からの手紙を、私は楽しみにしているよ。
私はお前と違って、あまり村人と話をしないから、執事に聞いた話なんだが、
最近村では病気が流行っているらしい。
でも、流行り始めたのがお前が出発してからで良かった。
もう友達が出来たんだな。
お姉ちゃんも寂しいよ。
フェリ
私は窓辺に寄り、寝静まった村を見下ろす。
ほとんど自室から出られない生活だったのにもかかわらず、妹には友人が沢山居た。たまに本当に調子が良い時には、村の方まで使用人と一緒に出かけて行ったりして。彼女の部屋の窓辺には、数日おきに村の子供たちが代わる代わるやって来て、手作りの土産物なんかを置いて行った。
その一方で、私は。
「フェリちゃんの部屋どこ? ……フェリちゃん?」
「え? あ、ごめん、考え事してた。三階の東の端だ」
「布団、まとめて持ってっちゃうね」
「手伝う!」
ドランクの背を追いかけると、じゃあ、と枕を二つ渡してくる。
生きていた頃の私は、一体何を見ていたのだろう。私には、この島中を走り回れる体力があったというのに。
私の世界には、本当に家族しか無かったんだろうか。妹とペット達しか、心を許せる友達が居なかったんだろうか。
思い出せない。でも、思い出して楽になれるのかどうかも、わからない。
「僕はどの部屋にしようかなー」
「あ、この廊下の反対の突き当たり、父上の部屋だ」
「じゃあそこにしよっと。……フェリちゃん、お父さんの事『父上』って呼んでたんだ」
それは全く意外そうな口ぶりではなかった。きっと実家で、私が書いた手紙の返事でも読んだのだろう。
「まあな。おやすみ」