第1話:ドランクを落としたいジータちゃん [3/3]
……と思ったものの、スツルムが愛想尽かしてドランクから逃げちゃうパターンへの回避策は無くない?
おせっかいだとは解ってるけど、あんな顔見せられたらどーしても気になる。実際のところ、スツルムはドランクの事どう思ってるんだろう。あの気持ちに気付いてないとか、気付いてるけど本当に迷惑がってたら、ちょっとドランクが可哀想。
「あっ、スツルム! ドランクが探してたよ。仕事の話があるって」
「ありがとう。何処に居る?」
「甲板」
まだ空を見続けているドランクを残して、私はスツルムを探しに行った。見付けた所で適当な嘘を言って導く。少し様子を見てからその後を追った。
「仕事の話って?」
「え、何の事?」
ドランクはスツルムと会話をする為に、背を丸める。
「……あいつ……」
私の嘘は即行でバレた。見つからない様に細心の注意を払いつつ、二人の様子を見守る。
「……泣いてたのか?」
スツルムがドランクの涙の跡に気付き、指で拭った。
「あは、バレちゃった」
「後で顔を洗え。で、お前は別に、あたしに用は無いんだな」
「うん。あ、でも、一緒に空を見てくれたら嬉しいな」
「……しょうがないな」
スツルムがドランクの隣に並ぶ。日が暮れるまで、二人はずっと広い空を眺めていた。
「じゃあお世話様~」
「おう、気を付けてな」
ドランクがラカムや皆に挨拶して、騎空艇を降りる。
「ジータ」
スツルムはその後を追おうとして、思い出したように振り返った。
「あいつはああ見えて、感情が発達してない子供みたいな奴だからな。子供同士の戯れでも、あたしの相棒に何かしたら、次はただでは済まさないぞ」
「は、はーい」
私にだけに聴こえる声量で凄まれる。
「じゃあな」
「うん、元気でね」
道を行く二人の背を見送る。グランサイファーも補給を終えると、再び空へと飛び立った。
なあんだ。なんだかんだ言って、ちゃんと両想いじゃん。
「あ゛あ゛!!」
「どうしたのよいきなり」
今回の件の顛末をルナールに語っていた折、ドランクが一つ、重大な事を言っていたのを思い出す。
「ドランク、許婚が居たって言ってた……」
「!! それは由々しき事態ね。その人は結局どうなったのかしら」
「そこまで訊かなかった……!」
「ドランクの年齢からして、もうとっくに他の人と結婚している可能性もあるけど、油断はできないわね……」
「推しカプに割り込む第三者は許せぬ……」
「同感だわ。でも、割り込んできて一波乱起こしてから、二人の絆を強めてくれるのならそれはそれで美味しいわよ」
「な、なるほど……!」
こうして私の旅の目的に、例の二人の恋路を見守るというのが加わった事は、ルリアには内緒。
♥などすると著者のモチベがちょっと上がります&ランキングに反映されます。
※サイト内ランキングへの反映には時間がかかります。