第8話:ドランクを助けたいジータちゃん [4/7]
「スツルム殿」
私達がグランサイファーの入り口で、報酬を取りに行かなければ、という話をしていた時、ドランクが相棒の名前を呼んだ。
「皆さんもお疲れ様」
「へん! ちょろいちょろい!」
「ベアは何もしてないでしょ」
ゼタに小突かれ、ベアトリクスは苦笑する。
「結局どういう星晶獣だったの?」
「繁栄をもたらすとか何とからしいんだけど、墜落で負傷して、自棄になって暴走してたみたい。ロゼッタが愚痴聞いたら大人しくなってくれた」
「話が盛り上がって相手が解放してくれないから、ロゼッタはまだ現場に残ってるのよねー」
イオが困ったように補足する。
「別に次の予定が詰まってるわけでもないから、ロゼッタの事は明日迎えに行くって事にしたの」
「はは。じゃあ、助っ人の意味はあんまり無かったのかあ」
「ドランクはバリア張っててくれたでしょ? お金は入ったらちゃんと分配するから」
「結局一人で行くのか?」
私がグランサイファーを離れようとすると、スツルムが尋ねる。
「皆歩いて疲れたって言ってるし」
「あたしは平気だ。道中の護衛くらいはする」
「団長さんは、今日は大事な依頼主様だからね~」
「ほんと? ありがとう。村の人達はちょっと遠くまで避難してるから、往復一時間くらいかなあ」
近くの街まで歩き、避難していた村人の代表に報告を済ませる。受け取った報酬は金貨の詰まった大きな袋で、私の腕には重かったのでドランクが運んでくれる事になった。
「団長さん、精神バリアも張れるようになったんだね」
「うん! 前に紹介してもらった本も全部読んだよ」
帰り道、ドランクが魔法の話を切り出した。私も成果を自慢したくて、話が弾む。
「へえ、そう。それじゃ……」
あともう少しでグランサイファーに着くという所で、ドランクが急に私を岩陰へと引っ張り込んだ。
「蘇生魔法を使うにも十分な技量があるかな?」
言ってドランクは報酬の袋を地面に置き、私の肩や腕、お腹の周りを確認するように触る。え、何、これそういうやつ? でもスツルムも居るし、え、ほんとに何だろ??
「どうなんだ?」
「心身共に異常なし。まあ、死にはしないでしょ」
「な、何が?」
二人の会話の内容が全くの意味不明だ。
「団長さん、以前から無意識に、回復系の魔法を周囲に向かってかけてたみたいなんだよねえ~。今はだいぶ制御できるようになったと思うけど」
「無意識に、魔法?」
「そう。しかも割と強めのやつ。そのエネルギーが何処から来てるのかは判らないけど、よっぽど魔法の効率が良いか、ルリアちゃん絡みかなあ。ま、どっちでも良いけどね」
ドランクの言葉が終わる前に、スツルムが剣を抜いて私に向かって構える。
「……どういうつもり?」
私も杖を構えた。攻撃系の魔法は得意じゃない。しかもこの二人が相手となると厳しいな。
「あーあー、スツルム殿駄目だって。あのね団長さん、僕達報酬は要らないから、代わりに頼み事があるんだ」
「お前が支払うつもりだった報酬、その全額で今度はお前を雇う、と言った方が良いか?」
スツルムは剣を下ろす。私も、一応話を聞くだけは聞いてみようと思った。
「頼み事?」
「蘇生魔法をかけてほしいんだ」
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