宇宙混沌
Eyecatch

第2章:ドランクと許婚を見守るジータちゃん


「……という事があって気にならない? 気になるよね? どうしよう~~~」
「ったく、お前、のこのこと男の部屋に一人で上がり込む暇があったら、勝手に尾行でもしとけ」
「何!? ラカムってば、いやらしい事する気なの? エロ同人みたいに!?」
「誰がするか! 子供[ガキ]は歯磨いてとっとと寝ろ!」
 いつもの様に部屋から追い出される。ぐぬう、ラカムはああ見えて口が堅いから、こういう話の壁打ちには持ってこいの相手なのに……。ルナールは、「原稿がノッてるから」ってレースも見に来ずにグランサイファーに籠ってるしなあ……。
 自分の部屋に戻ろうと歩いていると、焦った様子のスツルムとすれ違った。
「どうしたの?」
「ドランクを見なかったか?」
「見てないけど」
「風呂に行く時に鍵をあいつに持たせたんだが、何処かで油を売っているみたいでな。締め出されている」
「一緒に探すよ」
 ていうか何ちゃっかり一緒の部屋に泊ってるのお二人さんは!!!
「包帯を替えてやらないといけないからな」
 あれ、私、今うっかり声に出してたかな? 振り返ると、スツルムの耳が少し赤くなっていた。

 暫く館内をうろうろして、売店の近くでその青い髪を見かけた。声をかけようとしたが、スツルムが急に私を物陰に引っ張りこむ。
「何?」
「あれ」
 売店の向こう側は、テラスに出られるようになっていた。ドランクは、テラスの柵に身を預け、星空を見ている人影に近付く。
 私達は気付かれない様に、そっとその後を追い、二人の声が聞こえる場所で止まった。
「湯冷めしちゃうよ」
 ドランクが旅館の備品の上着を脱いで相手の肩にかける。
「お兄ちゃんは相変わらず優しいなあ……」
 ベアトリクスの声は泣いている。
「どうだろうね。僕、優しかった?」
「優しかったよ。沢山花冠作ってくれただろ」
「……優しくない事訊いて良い?」
「何だよ」
「姉君は、どうなったの?」
「……死んだ。私以外全員だ」
「……やっぱりね。ある日遊びに行ったら、屋敷が荒れ果ててもぬけの殻なんだもの。君だけでも生き残ってたと知れて、良かった」
「本当か!?」
 ベアの手が、ドランクが着ていた旅館のユカタヴィラを掴む。私とスツルムは、ただ息を殺して見ているしか出来ない。
「本当は姉さんの方が良かったんじゃないのか!?」
「勿論、二人共生きててくれた方が良かったよ」
「そうじゃなくて……」
「何だろう?」
「不戦勝なんて、嫌だ……」
 ドランクがベアを抱き締めて頭を撫でた。そうしていたのは一瞬だったけど、私は大分心にダメージを食らう。表情は変わってないけど、多分、今のはスツルムにもきつかった筈。
「競ってたの?」
「当たり前だろ!」
「僕の事好きだった?」
「言わせるな! 馬鹿!」
「僕はよく判らない」
 ベアが黙り込んだので、ドランクは続ける。
「お察しの通り、僕の方もその後色々あってね。もう、約束も何も無いでしょ」
「……お兄ちゃんに貰った花、全部押し花やドライフラワーにしてたんだ」
「そう」
「それも全部失ってしまった」
「残念だったね」
「なあ、また花冠、作ってくれないか?」
 ドランクはテラスの柵に向かい、宿の窓から漏れる明かりに照らされた景色を見る。
「旅館の花を摘む訳にはいかないからね」
 ドランクが左手で妙な動きをする。そこに、氷で出来た花冠が現れた。
「魔法で出した氷だから、普通のよりは長持ちするけど、それでも明日には融けるよ」
 ベアの頭の上に乗せる。
「……うん。そうだ、私もまたお菓子作ってやるよ。上手くなったんだぞ!」
「ベアトリクス」
 ドランクの顔だけは笑っていた。
「夢を見るのは、その花が融けるまでだ」

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