宇宙混沌
Eyecatch

コンビをやめる日 [4/6]

 休日を潰してしまってすっかり不機嫌になっていた。それを誤魔化すように喋り続ければ、スツルム殿まで不機嫌になって悪循環が生まれる。
「もう良い。飯に行くぞ」
 スツルム殿は強引に話を切り上げる。僕はベッドから降りて、備え付けの姿見を見た。ぐしゃぐしゃになった髪を解いて手で梳いていると、シャツの皺をスツルム殿が引っ張って伸ばす。
「着替えた方が良いかな?」
「ああ。あまりにも寝起きだ」
 進言通り服を替えてから宿を出る。夕飯時の繁華街は人が多く、すれ違った人とぶつかりかけたスツルム殿を抱き寄せた。肩の開いた服から覗く肌に指が触れると、僕より熱い気がする。夏も近いしね。
「何食べる? お肉?」
 機嫌の悪い時はそれ一択だ。焼肉屋を探して看板を見上げると、否定の声が上がる。
「軽いものの方が良い」
「お菓子食べてたしね」
 スツルム殿は何か言いかけたけど、そのまま歩を進めた。適当な店の前で止まったので、そこに入る。
「次の仕事どうしよっか? 流石に休みすぎたなあ。僕はこの前奢らされてすっからかんだし」
「貯金はあるだろ?」
「あるけど、こんなので手を付けてたら破産するよ? 今年こそアウギュステにバカンスも行きたいしさ~」
「あたしは行かないぞ」
「そんな事言わずに~。最近はギュステはそんなに混んでないって話だし」
「皮算用の前に考えないといけない事がある」
「そうだった。それで仕事なんだけどさ、確かポート・ブリーズの方で……」
 手帖を取り出そうとして、スツルム殿の様子がおかしいことに気付く。
「スツルム殿?」
「暫く仕事は、お前一人で行け」
「ええ!? どうしちゃったの急に? 僕何か気に障ることした?」
「別に……」
「じゃあなんで」
「ぎ、ギルドの仕事を手伝うことにした」
「はあ?」
 そこで店員が料理を運んできたので、一時中断する。スツルム殿はあっさりとしたサラダ麺と、珍しくジュースを頼んでいた。
「なんでなんで? 今日はドナさんとは会ってないはずでしょ!?」
「ああ。明日言いに行く。……どうしてお前が知ってるんだ?」
 また跡をつけてたのか! と刺されそうになったので、慌てて否定する。
「ドナさんと飲んでたんだよ! 街で偶然会ってさ」
「ドナと? なんだ、飲まされてたのか」
 納得した様子で手を下ろす。再び僕の質問だ。
「そ。で、どうしてそんな事言うの? この前断ったばかりじゃない」
「何も長をやるとは言ってない。暫く小間使いでもして小銭を稼ぐだけだ」
「そんな事しなくても、稼ぎの良い仕事は僕が――」
「それが出来ないって言ってるんだ」
 強く拒絶されて、口を噤む。僕は自分のサラダを頬張って、何か酷いことを言いそうになった口を塞いだ。
「……ドナと何を話したんだ?」
「別に。ナル・グランデの傭兵事情とか」
「そうか」
 その後は嫌な沈黙が続いた。

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