ギブアンドギブ [1/5]
「お前、ドランクの女だろ?」
「ドランクと付き合ってるんでしょ?」
「さっきの青い髪の人、彼氏さん?」
だったら何だって言うんだ。その言葉はそのままあたしの口から出てくる。目付きの悪さも相まって、それ以上話題を続けようとする者は居ない。
だったら何だって言うんだ。
それであいつを止める事なんて、出来やしないのに。
「あっ……痛……」
仕事中に怪我をしたって呻き一つ上げた事が無いのに、初めての夜は耐えられずに沢山鳴いた。
幾度か回数を重ねた今でも、あたしの体はドランクを拒む。嫌々しているのではないかと思われるのだけは避けたくて、相手の顔を引き寄せる。ドランクは軽く口付けを落とした。
「……無理は良くないよ」
小洒落た壁紙が貼られた天井を背景に、ドランクは溢す。
「もうやめようか」
「嫌だ!」
あたしは脚をドランクの腰に絡めて抜けなくする。ドランクの方は困った顔をして、やがて理性の溶けた顔で再び腰を打ち付ける。
あたしから誘った関係だった。手を繋いだのも、口付けを強請ったのも。尤も、そうはっきり口にする前に、察して先回りしたのは相棒だ。
でもいつまで経っても抱きしめてはくれなかった。キスでさえも、これ以上は踏み込ませまいとする柵の様だった。
だから、こればっかりは少々強引な手を取った。予約した時には部屋に空きがなかったんだ、なんて嘘をついて押し倒した。
そうしないと何処かに消えていなくなってしまいそうで。
「そんなに締めないで」
痛い、と小さく呟かれて、慌てて脚を外して深呼吸する。少し緩んだ所で、ドランクは角度を変えると小気味良い速度で浅い所を突いた。
「やっ、だめ、だめ、イク……!」
「うん。一緒に逝こうねえ」
制止は叶わず、爪先までぴんと張って駆け抜ける快感を逃がすのが精一杯だった。ドランクはそれを確認してから今度は奥まで押し込んでくる。一番深い所に吐精して、ややあってからゆっくりと引き抜いた。
「あ! あ、あ……」
無理矢理広げられた所にドランクの先端が引っかかって、まだ熱く余韻の残る道には刺激が強すぎる。漏れた声はドランクの唇が掬った。
「好きだよスツルム殿」
薄っぺたいピロートークをぼんやりと聴いていると、突然抱えあげられる。そのまま風呂場に連れて行かれ、中までその指で念入りに浄められた。
『異種族だけど確率はゼロじゃないからね』
そう言われると抵抗出来なかった。あたしにも、仕事を休んで子育てする覚悟がある訳じゃない。
抜けていくドランクの手を、なんとなく撫ぜる。
繋がったからと言って、あたしの不安が解ける事も無くて。望んでいる事は唯一つ、何処にも行かないでほしいだけなのに。
そのまま下腹部に留まっていた指が、核を摘んで転がす。油断していたので思わず叫んだ。水を使わずとも、新たに溢れ出る蜜がドランクの吐き出した白を押し流していく。
「そんなおっきい声、部屋の外まで聞こえちゃうよぉ」
お前がやってる事だろ!
腕にしがみついて爪を立てても、止めてくれる男じゃない。二回目の絶頂を迎え、あたしは何も言えないまま深い眠りに落ちていった。
明日の仕事に行かないでくれ、という大切な事を。
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