宇宙混沌
Eyecatch

ゆかいなコルワちゃん/シーナの口紅


「ひっさしぶり~」
「ひっさしぶり~スツルム、ドランク。短い間だけどよろしくね」
「タダで乗せてくれるんだもん、こちらこそありがたいよ~」
「雑用はしてもらいますけどね~」
 行き先が同じになったグランサイファーに乗せてもらうのも、もう何度目だろう。頻繁に団長さんと手紙をやり取りしているのが功を奏している。
 数ヶ月ぶりに会った団長さんは、前回よりも大人びて見えた。
「あ! お化粧してる?」
「気付いた?」
「お年頃だもんね~」
「と言ってもリップだけだよ~。貰ったの」
「ラカムに?」
「ううん、ジャスティンに」
 へえ、と首を傾げたが、深くは突っ込まないでおく。団長に何か差し入れる事もあるだろう。
「そういや、人が増えたんだって?」
「うん。また女の人なんだけど……」
「挨拶して良いかな?」
「もちろん! 今は部屋に居ると思う」
「女性の部屋か……」
「相手が共有スペースに出てくるまで待っても良い」
 尻込みした僕の言葉を、スツルム殿が引き継ぐ。
「あ、全然大丈夫。寝室と作業場は区切ってあるから」
「作業場?」
「今はアオイドス達も居ると思うよ」
 首を傾げつつ、教えられた場所へ向かう。扉をノックすると、女性の声で返事があった。
「失礼します。団長さんの知り合いの――」
「スツルムさんとドランクさんね!? お話はうかがっているわ! 私はコルワ。今後ともよろしくね」
 押し開こうとした扉は向こう側から勢い良く引っ張られた。なんかすごい目がキラキラしてる。アレだ、団長さんやルナールさんと同じ匂いがする。
「ええ……。っと、そちらは一体何を?」
 部屋の奥では、アオイドスとジャスティンが白いスーツに身を包んで座っていた。バレンティンは、上は下着姿で椅子の前に突っ立っている。
「モデルの次はマネキンというところだな」
「今度のファン向けイベントで着る衣装を作ってもらっているんです」
「立ち話もなんだし、どうぞ空いてる所におかけになって」
 言われて、僕達もアオイドス達の長椅子の端に腰を下ろした。
「イベントって?」
 尋ねると、ジャスティンとアオイドスが交互に答える。
「ホワイトデーですよ」
「当初はDOSSで行う予定だったんだが、アカイドスが『俺には無理』と言い出してな」
「『じゃあ虐三でいきましょう』とジェームズさんが」
「丁度その時に彼女と知り合ってね。手が速いし、こちらの要望も丁寧に聞いてくれて助かる」
「着心地も良いですしね」
 ジャスティンが示した袖から、僅かに魔力が感じられる。変わった魔法だなあ。
「アオイドスが胸元[はだ]けてるの珍しいね」
「『雄を出せ』とのマネージャーからの指示だ」
「プロデューサー兼ねてますからね。逆らえませんよ……」
「はは……」
「騎空団というよりアーティスト事務所みたいになってきたな」
 僕は苦笑して、スツルム殿は半ば呆れる。
「胸元なら、こっちの方が開けてるわよ」
 作業をしていたコルワさんが、衣装を着たバレンティンを振り向かせる。
「どう? 彼の傷跡を強調するにはこれよ!」
 バレンティンの衣装は、これまで見たことがない形に切り取られていた。胸に残る傷跡が惜しげもなく晒されている。
「変態だな」
「どう見ても変態ですね」
「もっと言ってくれえ!」
「面白いわね貴方達」
 コルワさんは三兄弟のやり取りを微笑ましそうに見ながら、道具を片付ける。アオイドス達も衣装を汚すといけないので、いつもの服に着替えた。
「スツルムさん達の今日のご予定は?」
 さて、アオイドス達がお暇するのと一緒に出るかと立ち上がったところ、訊かれた。
「特に無いですけど?」
「だったら是非お話を聴きたいわ!」
「? 何の?」
「二人の愛の!!」
 見なくてもわかる。僕の隣でスツルム殿が口をへの字にしている事くらい。

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