宇宙混沌
Eyecatch

もう一回 [4/7]

 もう一回したいなんて軽率に言うべきじゃなかった。スツルム殿が浴室に行って、自分一人になったベッドは急に冷たく感じられた。思わず毛布を掻き寄せる。
 手に入れるつもりなんて無かった。僕が好きなスツルム殿は、自由に生きるスツルム殿だ。僕が勝手に彼女に付き纏うのはまだしも。
「お先」
 スツルム殿がベッドに戻ってきた。湯で温まった肌には、僕が付けたはずの印が映える。
「お前もシャワー浴びろ」
「う、うん」
 水で頭を冷やして後悔を追いやれば、今度はまた肉欲が勝る。僕がした事なのに僕は何も覚えていなくて、まるで別の誰かにスツルム殿を取られてしまったかのような気持ちになった。
 体を洗っていると、赤色が指に滲む。僕の傷の出血はとっくに止まっていたし、つまり、そういうことか。
 最低だ。フラッシュバックを起こして病んでたところに酒を入れて泥酔したとはいえ、いきなり相棒を抱くか? ああもう、何も覚えてないからどういう流れでそうなったのかもわからない。
 とりあえず、一度セックスから離れよう。そりゃあ、スツルム殿と組み始めてからご無沙汰だったし、したくないわけじゃないんだけど。行きずりの誰かと一夜の夢、じゃないんだ。スツルム殿も、冷静になれば気が変わるかもしれないし。
 先に朝御飯を食べに行こうと誘えば、キスマークを消せと言われた。そりゃそうか、と指でなぞる。綺麗になった肌に、どうしてかモヤモヤした。

 初めてだったんだよね。やっぱり僕が無理矢理やったんでしょ? どうしてまたしてくれるって言ったの。
 結局始終その事を考えていて、朝食に何を食べたのか記憶が無い。とにかく気付いたら部屋に戻って来ていた。
「その、初めてだったよね?」
 スツルム殿が既定路線の様にベッドに向かうのを見て、慌てた。
「まあな」
「今日はもうやめといた方が良いかな?」
 自分の希望を相手の意思として選ばせようとするのは、僕の悪い癖の一つだ。
「別に。今日は休みだし、あたしは昨日も休みで疲れてはないからな」
 言い聞かせているような言葉に、溜息を密かに吐く。
「やっぱり嫌だったんでしょ? 初めては好きな人とが良かったよね?」
 言えばまた耳を引っ張られる。ピアス開けたばっかりだから結構痛いんだけど。
「終わった事をどうこう言っても仕方無いだろ。あたしが良いって言ってるんだから、それで良いじゃないか」
 ……良いんだ。肌を曝して、中を穿たれて。それも自分を傷付ける様な人間に。
 スツルム殿の瞳を見る。驚いた様に見開いた目と、対照的に小さく結ばれる口の形が愛おしかった。
 そう、愛しかったんだ。それを思い出して伝えようとしたけれど、出来なかったからそのまま口吻で誤魔化した。

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