「部屋も同じにしないか?」
「えっ?」
「その方が安いし」
次の仕事の為に移動して、また別の宿を取る際に思い切って言ってみた。
何もいきなり共寝をしようと言っている訳ではない。それにそういう関係なのだから、別に抱かれる事があっても構わない。金銭的なメリットもあるし、ドランクにも悪い話では無い筈だ。
「僕は構わないけど、スツルム殿は本当に良いの?」
肯くと、ドランクは何故か溜息を吐いてから、あたしの肩に手を置く。
「わかった。今後は部屋は僕が取るから、スツルム殿は此処で待ってて」
首を傾げながらも言われた通り、ロビーのソファーで待つ。
「お待たせ~」
ドランクは早々に戻ってくると、あたしを追い立てる様にして立ち上がらせる。
「あれ、女の子の方、大丈夫かしら」
「でもついて行く方も行く方よ」
受付の従業員があたし達をちらちらと見ながら何か話をしている。その視線を遮るように、ドランクはあたしを奥に進めた。
まさかその「女の子」があたしの事だったなんて、この時は知らなかった。
「ツインか」
「ダブルが良かった?」
「どちらでも」
強がって言ってみたが顔が熱くなる。ドランクは笑って、おでこを掻き上げてキスしてくれた。そう言えばあれっきりキスもしていない。
「ん」
顔を上げて強請れば降ってくる。しかし少しばかり抱き締められた後は、また離れていってしまう。
「仕事で汗かいちゃったし、お風呂入って良い?」
「お腹いっぱいでねむ~い。おやすみ」
「明日も早いし、そろそろ休もうか」
「この本今日中に読み終えたいんだよねー」
そうやってはぐらかされる日が続いた。いや、はぐらかされている、と思っているのはあたしだけなのかもしれない。
いずれにせよ、あたしの方は、もっとドランクに近づいて、触れて、愛したかった。
だから。
「その……手合わせ、しないか?」
自分から攻めた。
ドランクの気持ちも聞かないで。