宇宙混沌
Eyecatch

第3章:おばあちゃんの遺したもの [4/4]

「これ、本当に美味しいんですか?」
「私の記憶では美味しかったな」
 紫色のキノコを摘まんで首を傾げているジャスティンに答える。「そうですか」とジャスティンは袋の中にそれを放り込んだ。
「もうこれくらいで良いんじゃないか?」
 ぱんぱんになった袋を突く。ジャスティンは少しだけ唇を噛んだ。
「ローアインに届けたら、屋敷に戻ろう」
「……ええ」
 その返答に、私は鬱蒼とした森を登ろうとした。その瞬間、左腕を強く掴まれる。
「何!?」
 ジャスティンの顔が近い。私は思わずその頬を引っ叩いていた。
「きゅ~~~ん」
 スカートの中に隠れたままだったニコラが、音に驚いて飛び出す。それと同時に、茂みの中から抑揚の無い歌声。
「みーちゃったーみーちゃったー。きょーかんにーいうたーろー」
「月星人……」
「俺も居るぞ」
 ジャスティンが苦々しげに呟いた所で、カシウスとアオイドスが姿を現した。どうやら彼等も山菜やキノコを採っていたらしい。
「ところで、今の歌は何だ?」
「よくゼタがベアトリクスの失態を見た時に歌っていた」
 呑気そうに会話する二人の横を通り、ジャスティンは一足先に崖へと逃げる。
「同意の無い性行為は褒められたものじゃないぞー」
「五月蝿いこの童貞!」
 アオイドスに向かってそんな捨て台詞を吐きながら。そして私も、ジータの影響でその単語の意味が解るようになってしまった。
「ジャスティンは童貞じゃないのか?」
「処女ではないと思うが」
 もうやだこの月星人と歌手の会話も。
「怖かったかフェリ。ジャスティンの事は後できつく叱っておく」
 顔を覆った私に、アオイドスが優しく声をかける。
「征服欲を抑えられないのさ。以前からそうだったが、今のお気に入りである君が高嶺の花となってはね」
「はあ……」
 あいつ、私の事気に入ってるのか? ヤイア以外には誰に対してもあんな感じでは。
「迅速な危機対応。見事だった」
 カシウスはそう褒めてくれたが、私の気持ちは晴れない。
「ああ、いや、違うんだ」
 ジャスティンが嫌だった訳じゃないんだ。
「前にも此処で、同じような事があった気がして……」
 遠い遠い昔の事。五つほど年上のエルーンの少年。
 ある日あの崖にやって来て、そのままフィラを攫って行った。あいつ、結局どうなったんだろう。

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