宇宙混沌
Eyecatch

第3章:おばあちゃんの遺したもの [3/4]

「助かったよ」
 大広間に戻ると、バレンティンがピアノを弾いていた。
「なに。確認のためにな」
「本当はもっと上手く弾けるでしょ?」
「どうだろう。二十年は弾いていなかったし」
 バレンティンは弾くのをやめ、工具を片付ける。
「すまない。フェリを出せば話が早いかと思ったが、ちょうど出かけていて」
「ジャスティンとトラモント茸を採りに行っているわ」
「ああ、あの美味しいって噂の」
 カタリナさんとロゼッタさんの説明に、僕はおばあちゃんの手紙の内容を思い出す。

親愛なるフェリお姉ちゃんへ

お返事遅くなってごめんなさい。でも、私、退院しました。
今はお屋敷で、次男の――様と一緒に、家庭教師に勉強を教えてもらっています。
お兄様の方は、士官学校に戻られてしまいました。

こちらのお食事もとってもおいしいけれど、最近はトラモントのキノコスープの味が恋しくて仕方ありません。
もう少し容体と気候が良くなったら、今度は――様も一緒にトラモントに行ってみようって、お兄様が。
お姉ちゃんはお土産は何が良いですか?

――様は歴史学者になるのが夢だそう。
私の夢は? と聞かれたので、これまで考えた事が無かったけれど、考えてみました。
私はお医者様になって、トラモントで流行っている病気を治してあげたいです。
だからお姉ちゃん、無理しないでね。
必ず病気を治して、そっちに行くから。

フィラ

追伸:そうそう、ピアノの椅子の仕掛けには気付いてくれた?
もしまだだったら、そこに宝物を隠してあるから、頑張って開けてね!

 それが、椅子の中に隠されていた物の一つ。おばあちゃんが書いて、届かずに戻って来た手紙の、一番最初のものだった。
 そしてそれよりも一つ前のやり取り――フェリちゃんがおばあちゃんに宛てて、届いた最後の手紙に、全てが記されていたのだった。

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