宇宙混沌
Eyecatch

第5章:うっかり見られちゃうジータちゃん [4/4]

「案外元気そうだな」
 目覚めたラカムの第一声はそれだった。
「案外って何よ!」
 と言ったものの、つい小一時間前まで、父親が帰って来ない寂しさを思い出してめそめそ泣いていたのは事実だったり。
「いや、皆それぞれきついもん見せられたんじゃねえかと思って」
「個人差がありますー。伊達に騎空団の団長やってませんー」
 そう強がった私を、ラカムが引き寄せた。大きな胸に包まれて、図らずも安心する。
「団長だからって一人で抱え込むこたぁねえんだぞ」
「……わかってるわよ」
 ラカムの背中に掌を当てる。温かい。昔はお父さんにもよくこうしてもらったな――。
「取り込み中のところすまないが」
 アオイドスの声で私達は飛び上がり、離れた。そう言えばここ談話室だった。ラカムは体格が良いから、部屋まで運ぶの諦められちゃったらしい。皆もう寝たから、さっきまでは二人きりだったけど。
「朝までに事の経緯を説明してもらえると助かる」
「いや、これは、その……」
「今ここでジータと抱き合ってた事じゃない、アカイドス。山での事だ。ユーステスに大方訊いたが、幻覚を見た人間の話も聞いておきたい」
「他の奴等はどうしたんだよ?」
「ベアトリクスはとても話ができる状況じゃない。ドランクはさっき目覚めた様だが、崖から落ちた事だしこのまま休ませようと思う。スツルムはただ昔の思い出を見ただけだと言っていた。他の人間もただ過去の出来事を見ただけなのか?」
「……私はそうかな。出来事って言うより、その時の気持ちを思い出したっていうか」
 すごく寂しかった。本当はお父さんに早く帰ってきてほしかった。いつも、出来たら次の出発を遅らせてくれないかと思っていた。
 でも一度も言えなかった。私はお父さんの夢を応援する娘でありたかった。そう決めたのは私なのに、心の何処かで、こんな家庭に生まれてきた事を恨んでいた。
 それでもある日ビィが言ったの。
『オイラも居るぜ。オイラだけじゃねえ。隣のおばさんも面倒見てくれるし、友達だって沢山居るじゃねえか』
 そう。私の世界には、お父さんだけじゃないの。今は昔よりも、もっともっと沢山の仲間が居る。それで良いじゃない。そして、皆でお父さんに会いに行けば良いじゃない。
 それに気付いたら目が覚めた。
「俺も似たようなもんだな」
 ラカムも内容は語らなかったけど、その表情に翳りは無い。
「なるほどな」
 そこにユーステスも現れる。
「ベアトリクスは、余程触れられたくない事があったのか」
「心配か?」
「それなりにな。あいつは元々感情で動くタイプではあったが」
 私もベアの様子を思い出して、暗い気持ちになる。前にもドランクに貰って、あんなに喜んでいた氷のティアラ。最終的には前も壊して捨てていたけど、今回は目が醒めるなりいきなり床に投げ付けて、捻った足で何度も何度も踏んで泣き喚いていた。魔法で出来た氷はすぐには解けないから、フェリが困った顔で残骸を掃除するのを、見ているしか出来なかった。
「俺達は明日、もう一度山に登る。アオイドス達が張ってくれたロープもあるし、一所から動けなくなってしまった原因にも目処が付いている。今度は調査に専念できるだろう」
「わかった。やっぱり何かあるんだ。明日はルリアにもついて来てもらうね」
「それが良いだろう。それからアカイドス、起きて早々悪いが、騎空艇を動かしてほしい。一晩中皆にくしゃみをさせておくのは心苦しいからな」

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