うそつき [5/5]
恥ずかしそうに己の身体を隠したスツルム殿に、ああ、部屋の明かりを消さなきゃと一度立ち上がる。しかし真っ暗にするのも面白くない。互いの表情が解る程度の明るさだけ残して、彼女の秘部を探った。
「あっ、いっ……」
違和感はすぐにやってきた。僕の指すら受け入れようとしないそこに、最初に捨てた仮説が再浮上する。
スツルム殿が、嘘を、吐いた? 何の為に?
思わずその顔を穴が開くほど見つめてしまって、スツルム殿は視線を逸らす。僕の手は相変わらず門前払いを食らっていた。
「……調子悪いなら、また今度にしようか」
漸く無難な言葉を吐き出して、彼女の下着を取ろうとした手を掴まれた。そのまま形の良い胸に押し付けられる。
「し、して良い。このまま……」
「無理は良くないよ。結局何も無かったんだしさ、スツルム殿が良いなら、僕が責任取るって言った事も忘れてよ」
好きでもない人とするの嫌でしょ。自分で言っておいて、それはひどく首を絞めつけるようだった。
別に、最初から男として見てほしいなんて思ってなかったでしょ。明日からもこれまで通りの生活が続くだけじゃない。
僕が傷つく必要なんて何処にも無いじゃない。
「だから、そうやって」
どうしてかスツルム殿の方が涙声になっていた。
「自分で自分を傷付けるのを、やめろって言ってるんだ」
「……それとこれとがどう繋がるの?」
図星を突かれるのは少し腹が立って、手のひらの下にあった乳房を強めに掴む。この状態を続けられると、歯止めが利かなくなるかもな。
「……冗談、だったんだ」
「責任取れって言った事?」
スツルム殿は頷く。
「ドランクは何もしてない。……寝惚けてあたしの事を抱き枕にはしたが」
「あはは、それはごめんねぇ。叩き起こしてくれたら良かったのに」
「そうしなかったのは、あたしだ。けど、つい、出来心で」
「だから体でお詫びしてくれるの?」
「そう。悪かった。あんなに子供が生まれるのを楽しみにするなんて思わなかった」
「僕そんなに楽しそうだった?」
再び首が縦に振られる。僕は全然そんなつもりは無かったけど、スツルム殿が言うならそうなのかな。確かに、若い男がせっせと育児本を買い漁ったり、パートナーの分まで仕事に勤しんだりしたら、誰だって楽しみにしてるって思うかあ。
「スツルム殿」
僕はスツルム殿の胸から手を離し、そのまま布団に押し倒した。
「自分をもっと大切にした方が良いよ」
ひどい。
「優しくしようと思うけど、初めてなら多分痛いと思うなあ」
酷い奴だよ、僕は。
「構わない」
だって結局、その嘘を許せる程の心の広さなんて持ち合わせていないんだもの。
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