第3話:「悉く不幸」 [2/3]
……仲間だ。
僕は驚いた。まさか、僕以外にもこんな魔力を持つ人間が居るなんて。
あれ、でも、目の色揃ってるな。僕みたいに何か小細工してるのかな。
「……私は隣で手紙の整理をします」
彼も僕の魔力には気付いたみたいだったけど、露骨に避けられた気がする。
「そう。よく来たね。私がギルド長のドナ。お前は?」
褐色の肌のドラフが問う。
「名前無いんですよね」
「嘘つけ。そんな身なりで、孤児でもないだろう? ま、名乗れないならそれで良いよ。今日はどういう用件で?」
「そこの人と一緒に仕事したいんですけど、やっぱりギルドに入らないと駄目ですか?」
「いや、どっちも好きにすれば?」
「はぁ!?」
あっさりと許可が出た一方、当の本人、癖の強い赤毛の少女は大きな声で拒絶する。
「なんであたしがお前と!」
「ご、ごめんごめん。殴った事は謝るから、ね?」
声量に耐えかねる。耳を押さえた僕を見て、ドナさんが宥めた。
「別に良いじゃないか。殴られたのだって戦闘中だろ? それに、自分より強い奴や、自分とは違うタイプの戦い方をする奴と組むのは、良い鍛錬になるよ」
鍛錬、という言葉に一瞬心が揺らいだ様だが、ふん、と腕を組んでそっぽを向く。
「態度が気に入らない」
「スツルム。お前の態度も客人に対するものじゃないよ」
「客だと? 勝手に押しかけて来ただけだろ」
スツルムと言うのか。ドナさんが嗜めるも、完全に背を向けられてしまった。二人は血縁じゃないみたいだけど、姉妹みたいだな。
姉妹……?
「ギルドに入るなら、この建物も、鍵のかかってない部屋は自由に使って貰って良いよ。ヴォルケ、説明してやって」
何か思い出しかけたが、僕の意識は隣の部屋から呼び戻された、例のエルーンに向いてしまい、再び有耶無耶になった。
ギルドに入りたい訳じゃないけど、聞けばかなり緩い集まりらしく、適当な時期に僕が居なくなっても問題無さそうだった。使えるリソースは使っていきたいし、案内はしてもらう事にする。
「さっきの部屋がギルド長の部屋です。入るのにはドナの許可が必要です」
ヴォルケの隣を歩くのはかなりのプレッシャーだった。どうやら、互いから漏れ出る魔力が干渉しているらしい。特に、土属性らしいヴォルケに対する水属性の僕は不利だから、相手に害意は無いのに気圧されてしまう。
「この辺りの部屋は、空室なら仮眠や短期間の宿泊に使用出来ます。掃除洗濯は全部自分で。鍵は壁にかかっていますから、使い終わったら戻してください」
一通り建物の説明が終わったのか、ヴォルケが僕を振り返る。
「何か質問あります?」
「どうやって目の色揃えてるんですか?」
「……場所を変えましょう」
「あれ? あのエルーン帰ったの?」
「はい。さっきヴォルケが外に連れ出してました」
部屋に郵便物を届けに来たメンバーからそう聞いて、ドナは残念そうな顔から、複雑そうな顔に変わる。
「そう、ヴォルケが……」
ヴォルケは、あたしよりもドナとの付き合いが長い。若く見えるが、あたしと出会った時には既にあんな感じで、年齢不詳キャラで通っている。仕事の話以外は殆どしないし、謎が多い。しかしそんな彼の事を、ドナはとても重用していた。
「まあ……同じ場所に居ない方が、良いか……」
「? 誰がだ?」
あたしに聞かれたのがまずかったのか、ドナは笑って誤魔化す。
「スツルムもさ、そろそろ武者修行に出てみるのはどう?」
「何を突然」
「家族からの手紙はちゃんと預かっとくから。お前の腕ならどこでも通用するよ、実際、最近の仕事は退屈だったろ?」
「まあ……」
そういや、サシで戦って負けるなんて久々だったな。油断したのはあったけど。
「チャンスがあったら掴むんだよ」
ドナはあたしの目を見て微笑む。ふん、言われなくても。
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