「す、す、すみません、ドナさん!」
「あいつほんとに恐ろしくて!」
「スツルムの事も人質に取られてたし、口を割るしか無くて……」
「あーはいはい。解ったから。解散解散」
ドナは自分の部屋に集まり、頭を床に付けて平謝りしていたメンバー達を追い返す。
「それにしてもびっくりしたよ。お前がそう簡単に捕まるなんてねえ」
「……油断した。情けをかけたのが悪かった」
さっさとぶちのめしておけば良かった。でも、
『可哀想だよ』
そう吐き捨てた当の本人が、一番悲しい瞳をしていた。
金色の瞳――青い髪のエルーン――どこかで見た気がするんだが、最近じゃないな……。
「治療、終わりましたよ」
戦闘中に付いた小さな切創などを、回復魔法で癒やしてくれていたヴォルケが手を離す。
「脳震盪以外は大した事なかったみたいですね」
「良かった良かった。でも、青い髪のエルーンの目的は一体何なんだろうねえ」
ドナは腕を組んで首を傾げる。
「ギルドに入りたいってんなら、拒むつもりは無いけどさ」
話によると、あたしは気絶させられた後、貴族の屋敷まで運ばれたらしい。そして青い髪のエルーンはこう言った。
『この子の名前なんていうの? 君達、組織的に派遣されてきた感じかな? 教えてほしいなー。さもないとこの子がどうなるか判ってるよね?』
要はあたしを人質にして、あたしやこのギルドの事を聞き出した。仲間はあたしの身を案じて、あたしの名前や素性は隠し通してくれたが、この傭兵ギルドの事については、奴があたしの首にナイフを突き立てたので喋ってしまった。
別に秘密にしている事は無いが、その後あたしを置いて逃走したというのが何とも気味が悪い。あいつが仕事を放り出したせいでレジスタンスは負けたし……。
そんな事を考えていると、ギルドの中が騒がしくなる。
「噂をすればかな。良いよ、通して」
「失礼します」
やってきたのは、高そうな宝石の付いた服を着て、長い青髪を高い位置で結ったエルーンの男。歳はあたしよりも二つ三つ年上に見える。
そいつが部屋に入ってきた瞬間、空気が変わった。それは青い髪のエルーンにも予想外の事だったらしく、金色の目を大きくして、視線を移動させる。
彼が見たのは、さっきまであたしの腕を握っていた、ヴォルケだった。