宇宙混沌
Eyecatch

許してくださいお義兄さん


「善逸さん……?」
 俺は一応、答え合わせを聞いた。子供が出来た。たった一回体を重ねただけだけど、出来る時は出来るもんなんだなあ、ってそうじゃなくて。
「善逸さん。ど、どうしよう……」
 まずい、何か言わなきゃ禰豆子ちゃんが困ってる。
「あっ、いや、その……凄く嬉しいよ! 体辛くない? 俺にできる事があったら何でも言ってね」
 そう言って手を握ると、ほっとした表情になった。身重の妻に心配をかけさせるなんて夫失格だぞ。
 ああ、そして俺はこれから、禰豆子ちゃんに本当の妻になってもらう為の試練に赴かないといけない。
「禰豆子ちゃんは部屋で休んでてよ。炭治郎と話をしてくる」
「これからの事?」
「うん、一応ね。禰豆子ちゃんはどうしたい?」
「善逸さんのしたいようにして」
「町に住もうか。俺、少しはお金も貯まったし」
 笑顔に安心して、薪を集めに行っているという炭治郎を探しに行く。音を辿って行くと、そう遠くない場所で斧を振るっていた。
「善逸。来てたのか」
「あのさ、炭治郎」
「何?」
「……いや、その……」
 待って待って待って、何て言おう。禰豆子ちゃんを妊娠させたので結婚させてください? いやいやいや絶対怒られるよ、順番が違うよ。頭突きされて頭かち割られるよ!
「善逸?」
「ア゛ーーーーーーーー!!!! 許して炭治郎! 出来心だったの!」
 情けなくも、いつもの様に泣きながら頭を下げる。炭治郎の表情が曇って、音が変わった。ヤダヤダヤダ怒ってる! やっぱり怒ってるよぉ!
「禰豆子に子供が出来た事?」
「イヤーー!! なんで知ってるの!?」
「何があったかくらい、匂いでわかるよ」
 うう、そりゃそうか。感情的な匂いだけじゃなくても、炭治郎なら部屋に残った物理的な匂いだって気付いちゃうよね。炭治郎の家で事に及んだのが馬鹿だった。って、そうじゃなくて。
「それもだけど、だから頼む。禰豆子ちゃんとおなかの赤ちゃんの事はちゃんと守るから、結婚させて」
「出来ちゃったものは仕方ないし、それは構わないけど」
「良いの!?」
 顔を上げると、炭治郎の表情は険しさを増していた。え、なんで?
「出来心だったって言うんなら、その事は、多分暫く許せない」
「あ……」
 そりゃそうだ。俺が一時の気の惑いで手を出したって思ったら、そんな男の所に嫁がせるのは気分悪いよな。
「違うんだ、炭治郎。さっきは咄嗟にそう言っちゃっただけで……」
 いや、これも言い訳がましいよなあ。どうして俺こんななんだろう。
「善逸」
 柔らかい声。再び俯いていた俺の視界に、豆だらけの手が入ってきた。
「わかってるよ。善逸が禰豆子の事、大事に想ってくれてる事は。だから言い訳なんてしないでくれ」
「……炭治郎~~~」
 そうだった。炭治郎がそんな、失言をネチネチ責める様な心の狭い人間じゃないって知ってたじゃんか。
「ありがとう~~~ごめんね急な事になって。お家も寂しくなっちゃうね」
「別の所に住むのか? 此処は不便だしな」
「禰豆子ちゃんと町で暮らします……」
「禰豆子と二人で決めた事なら俺は口出ししないよ。それに」
 炭治郎は満面の笑みを俺に向けた。
「そうしたら俺とカナヲの二人きりになれるだろ。こっちも子供が生まれるまでの短い間だけど、二人でゆっくり過ごせそうで嬉しいよ」
「……炭治郎、鬼狩りやめてからなんか変わったよな……」
 素直になったというか。いや、元々真っ直ぐすぎるくらい素直だったけどさ。何ていうの、欲に忠実になった?
「禰豆子には善逸が居るし、俺もやっと兄貴の顔をしないで良い時間が増えたから」
「……そっか」
 俺は薪集めを手伝って、二人で家へと戻る。禰豆子ちゃんとの新居、良い所があると良いな。

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